| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-155  (Poster presentation)

コナラ属3種における堅果成長フェノロジーの違いが種子食昆虫の加害に与える影響
Effect of acorn growing phenology on patterns of pre-dispersal seed predation by insects in three Quercus species

*池本拓真, 溝健太, 平山貴美子(京府大・院・生命環境)
*Takuma IKEMOTO, Kenta MIZO, Kimiko HIRAYAMA(Kyoto Prefectural Univ.)

 ブナ科樹木の種子である堅果は大型で栄養価が高いことから、開花後から成熟に至るまで様々な種子食昆虫による加害を受けるが、それぞれの種子食昆虫の堅果への加害は、堅果の成長段階のある特定の時期で起こることが明らかとなってきている。もし主要な種子食昆虫がジェネラリストで、複数のブナ科の寄主が混交している場合には、それらの堅果成長フェノロジーが加害の影響の大きさに関係し、種子生産パターンにも影響している可能性がある。本研究では、同一林分で混交するコナラ属コナラ、アラカシ、ツクバネガシについて、開花から成熟健全堅果に至るまでの脱落要因を複数年で調べるとともに、堅果成長フェノロジーと主要な種子食昆虫の生活史との関係性を調べ、主要な種子食昆虫が種子生産に与える影響の違いを明らかにすることを目的とした。
 コナラの種子生産にはハイイロチョッキリの吸汁・産卵が大きな影響を与えていたのに対し、アラカシ、ツクバネガシは、ともに種子食昆虫の加害の中ではハイイロチョッキリによる吸汁が最も多く見られたが、種子生産には未熟脱落が最も大きな影響を与えていた。ハイイロチョッキリは羽化後、様々なブナ科の未熟な堅果を吸汁し、その後産卵を行うジェネラリストである。ハイイロチョッキリが多く吸汁を行う7月後半から8月前半頃は、ツクバネガシの堅果サイズが最も大きく、コナラ、アラカシと続いた。二年かけて堅果が成熟するツクバネガシは、殻斗と果皮がコナラ、アラカシに比べ厚く、ハイイロチョッキリが口吻をつきさしても上手く吸汁できないものが多いと考えられた。アラカシの堅果成長は主に9月以降におこっており、堅果あたりの吸汁効率が低下すると考えられた。このような樹種による堅果成長フェノロジーの違いにより、ジェネラリストであるハイイロチョッキリは、コナラを選好して吸汁し、それが種子生産パターンにも影響を与えていると考えられた。


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