| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-156  (Poster presentation)

浅所海岸における越冬水鳥によるコアマモへの攪乱の評価
Evaluation of the disturbance by the overwintering waterfowl on Zostera japonica at Asadokoro tidal flat

*Seishiro KODA(Hokkaido University), Ryuhei YOSHIDA(H.I.T.), Yoshiyuki TANAKA(H.I.T.), Takeshi MITSUYA(Hiranai Soc. Swan Protection)

海草は、様々な生物との相互作用に関与している。草食性鳥類による攪乱 (捕食や、堆積物の再懸濁等) は、海草の被度を減少させることもあれば、栄養塩の循環を促進し、海草の分布に対し正の影響を与える場合もある。青森県平内町小湊にある浅所海岸は、ハクチョウの飛来に合わせて海草コアマモ(Zostera japonica)の分布が減少することが報告されているが、コアマモがどれほど渡り鳥から攪乱を受け、どのような影響を受けているかは明らかになっていない。本研究では、浅所海岸のコアマモに渡り鳥が与える生物撹乱の影響を評価することを目的とした。2019年の4月~12月、2020年10月~11月に浅所海岸に設定した57点の側線調査及びドローンによる空撮をおこない、コアマモの分布変化を確認した。渡り鳥飛来前の9月30日に渡り鳥がコアマモを捕食できないケージ有りの実験区と、コントロール区画を隣接して12セット設置した。実験区設置日と渡り鳥飛来後の11月11日にコアサンプルを無作為に採集し、2区間内のコアマモの生物量を比較した。ハクチョウ初飛来時の2019年10月11日には約0.86haの範囲にコアマモが分布していたが、その後コアマモ分布域は減少し、11月4日にはほぼ消滅した。コアマモの地上部の生物量は、9月から11月にかけて実験区、コントロール区共に80%以上減少した。地下部に関しては、コントロール区は95%減少したのに対し、実験区では26%の減少に留まった。両区ともコアマモの地上部が減少したため季節変化の影響も受けていると考えられるが、地下部に関しては実験区、コントロール区間の減少率の差が他の地域で行われた研究と比べて大きいことから、浅所海岸のコアマモは、渡り鳥による攪乱の影響を大きく受けていることが示唆された。しかし、翌年2020年10月2日のコアマモ分布域は約1.59haと例年並みに回復していたため、浅所海岸のコアマモは種子繁殖を積極的に行うことにより渡り鳥からの攪乱に耐え、存続していると考えられる。


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