| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-157  (Poster presentation)

マタタビの白い葉は送粉性昆虫を呼んでいるのか?
Do Actinidia polygama's leaf color change the number of pollinator.

*Kazuaki TATEMATSU, Tomoko OKAMOTO(Gifu Univ.)

植物における葉の色の変化は、これまでに被食防御や種子散布の促進、寒冷地における葉温上昇などの役割があると考えられてきた。一部の植物種では花期に合わせて葉の色が変化することがあり、このような葉の色の変化は、送粉者の誘引などに貢献すると考えられる。しかし、これまで送粉者との関係により、葉の色が変化する可能性についてはあまり着目されていない。
マタタビActinidia polygama (マタタビ科) は、雌雄異株のつる性木本植物であり、6月から7月に開花する。そして、花期に合わせて一部の葉の色が白くなる特徴を持つ。このような葉の白色変化は、送粉者を誘引する役割があると考えられてきたものの、これまで検証されていない。本研究では、岐阜県のマタタビの野生集団を対象に、1)送粉様式の解明、2)白い葉の有無と送粉者数の関係、3)白い葉の有無と結果率・結実率の関係、の3点について調べることで、葉の白色変化の生態的意義を明らかにすることを目的とした。野外における観察と袋掛け実験により、マタタビは風による送粉は行われず、ハナバチやハナアブ等の昼行性の昆虫に送粉されることが明らかになった。また、白い葉を取り除いた区と残した区で送粉者の訪花数を比較したところ、白い葉を残した区では送粉者の訪花数が増加するものの、結果率および果実あたりの種子数には違いがないことが明らかになった。本研究の結果から、マタタビの花期に合わせた葉の色の変化は、花への送粉者の誘引を補助する可能性が示唆された。また、送粉者の訪花数が増加しても、結果率と結実率は増加しなかったため、特にマタタビの白い葉は、花粉制限がかかるような送粉者密度の低い地域においてより適応的な送粉戦略である可能性が考えられる。


日本生態学会