| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-161  (Poster presentation)

スキー場草地での植生再生過程における送粉ネットワーク構造・植物の繁殖成功の変化
Plant-pollinator network and plant reproductive success in the process of plant recovery on ski grasslands

*平山楽(神戸大学), 田中健太(筑波大学), 石井博(富山大学), 丑丸敦史(神戸大学)
*Gaku HIRAYAMA(Kobe Univ.), Kenta TANAKA(Tsukuba Univ.), Hiroshi ISHII(Toyama Univ.), Atushi USHIMARU(Kobe Univ.)

20世紀以降、植林や管理放棄による二次林化などによって日本国内の半自然草原は減少し続けている。半自然草原の植生再生は管理再導入などにより試みられてきたが草原性植物の多様性の完全な再生は困難であることが指摘されている。
植物−送粉者間の送粉ネットワークの構造は植物の繁殖成功に影響を及ぼしうる。一般的に、人為攪乱はネットワークのジェネラリスト化を引き起こし、群集レベルで植物の繁殖成功を低下させうると考えられている。そのため、草地の植生再生を考える上で、送粉ネットワーク構造を把握し、植物の繁殖成功との関係を知ることは再生草地の将来性を知る上で重要な知見になりうる。
本研究では、再生草地における草原性植物の多様性回復が停滞する要因の1つが「森林化による草原性虫媒植物種の多様性減少の影響で送粉ネットワークがジェネラリスト化した状態が長く維持され、植物の繁殖成功が低く抑えられてしまっている」ためであると仮説を立て、その検証を行なった。
本研究は長野県上田市の菅平高原の複数スキー場において調査を行なった。全てのスキー場は元々放牧地であったが、その後森林化を経て1910年以降に造成されたスキー場(新スキー場)を10地点と放牧地がそのまま利用されたスキー場(古スキー場)を5地点選んだ。調査では、開花虫媒植物およびその訪花者の観察と調査域に広く生育する植物6種の柱頭を採取し、送粉ネットワークの構造および繁殖成功とスキー場の草原管理期間との関係を検証した。
解析結果から、新スキー場では古スキー場と比べて送粉ネットワークが有意にジェネラリスト化していた。植物の繁殖成功は、新スキー場で古スキー場よりも有意に低いこと、新スキー場では草原管理期間が長くなるほど高くなることが示された。
発表では、この解析結果を踏まえて草地植生再生過程における植物–送粉群集の多様性や送粉ネットワークの構造、構成植物の繁殖成功の時間的動態についても議論する。


日本生態学会