| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-162  (Poster presentation)

三宅島における2000年噴火後13年と21年後の鳥類群集と植生の関係
Relation of bird community and vegetation in Miyake Island -13 and 21 years after the eruption in 2000-

*須藤七海(筑波大学)
*Nanami SUDO(Tsukuba Univ.)

 噴火などの大規模攪乱後の生態系のモニタリングは生態系の回復力の理解に役立つが、鳥類を含めた研究例は少ないのが現状である。三宅島2000年噴火は生態系に強い影響を与え、鳥類群集も大きな打撃を受けた。三宅島では噴火直後から鳥類群集のモニタリングがなされ、2011-2014年には広域的な鳥類群集の調査により噴火後の植生と鳥類群集の関係が検討された(Katoh et al. 2020)。そこで本研究では、Katoh et al.(2020)と同一地点の鳥類群集を再調査することで、噴火から21年経過した鳥類群集の現状とその前回調査からの直接的な変化を明らかにすることを目的とした。
 2021年5月中旬から下旬にかけて各調査地で鳥類の定点調査を行い、前回調査資料及び上條による植生調査資料と併せて解析を行った。調査は目視及び鳴き声により半径25m圏内の個体を20分間記録した。
 各階層の植被率を合計した合計植被率と鳥類の種数について有意な正の関係がみられたほか、多くの種は森林で出現する傾向が確認できた。また、合計植被率と鳥類の個体数・種数の関係は前回調査に比べ弱くなる結果となった。裸地から草原に回復した2地点では前回調査時に観測されなかったウグイスやホオジロなどの草原性の鳥類が観察され、遷移系列に沿った鳥の変化を捉えることができた。一方で裸地から草原に回復した2地点を除くと明らかな鳥類の出現や増加は見られず、前回調査と2021年の調査結果を比較すると各地点の種構成は全体的に類似性が増加する傾向にあった。原因の一つは、被害の大きい裸地から草原に回復した地点で鳥類が出現し始めたことが挙げられる。鳥については減少傾向にある種の存在も示唆された。しかし、年変動など植生以外の要因による影響を反映している可能性もあるため、今後減少傾向が見られた種に焦点を当てた調査等を進める必要がある。


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