| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-163  (Poster presentation)

コケ上で多様化したダニの発見―コケの吸汁に関わる行動および口器形態の種間比較
Discovery of a mite lineage diversified on mosses: interspecific comparisons of plant sap-sucking behavior and mouthpart morphology

*池田颯希, 今田弓女(愛媛大学)
*Satsuki IKEDA, Yume IMADA(Ehime Univ.)

セン類(コケ植物)を食べる種は, 節足動物の複数の系統で知られている. しかし, セン類とセン類食者との相互作用に関する研究は極めて少ない.

Eustigmaeus属(ケダニ目)の一部の種は, セン類を餌としセン類上で生活史を完結させる. 本属は体長200-500μm程で, 𨦇角の針状の可動指でセン類の葉細胞に穴を開け, 細胞内容物を吸汁することが知られている. しかし, 本属のセン類食性種の多様性は過小評価されている可能性が高い. 加えて, その寄主範囲もほとんど調査されていなかった.

そこで本研究ではまず, 本属の多様性および寄主範囲を明らかにするため, 野外にてEustigmaeus属とその寄主を採集した. 中国・四国から関東地方に及ぶ69地点での調査の結果, 本属のセン類食性種を複数発見し, これらは全て日本未記録種だった. これらの種は様々な系統のセン類を寄主としていた. さらに, 一部の種では野外にて特定のグループのセン類のみを寄主とする傾向がみられた.

続いて, 異なる寄主を利用する複数のEustigmaeus属の種において, その摂食行動および口器形態を観察した. 野外で採取したセン類のコロニーを実験室に持ち帰ったあと, 実体顕微鏡下でセン類上の個体の摂食行動を録画・観察した. その結果, 寄主とするセン類の系統に関わらず, 複数種のダニに共通する摂食行動が認められた. その摂食行動には, 摂食の際に寄主の葉縁を歩脚で抱える行動や定型的な葉細胞摂食パターンが含まれる. また, 口器形態には顕著な種間差がみられた. 発表では, 口器形態とそれぞれの寄主の葉形態との関連について議論する予定である.


日本生態学会