| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-165 (Poster presentation)
海洋島の生物には、アイランドシンドロームと呼ばれる共通した特徴が見られることが多く、その背景の解明は進化学的に重要な課題である。その要因として、生物相や環境条件が本土とは異なることが想定される。本研究では、送粉者相の相違に起因する特徴に注目し、佐渡島において虫媒花のカタクリとウラジロヨウラクを対象としてアイランドシンドロームの検証を行った。佐渡島は本州とは地理的に近いものの、時間的な隔離程度が高く、アイランドシンドロームが適用されると予測した。
カタクリは本州と佐渡を合わせて計20地点、ウラジロヨウラクは本州と佐渡の2地点を対象地とし、カタクリは葉形質2項目と花形質4項目、ウラジロヨウラクは花形質5項目について測定した。さらにカタクリの葉の斑紋の有無の割合を比較した。訪花昆虫相の比較では、カタクリ3地点、ウラジロヨウラク2地点を対象地とし、各地点における開花期のピークにトレイルカメラを設置してタイムラプス画像を撮影し、訪花昆虫の種、種数、時間当たりの訪花数等について本州との比較を行った。
その結果、カタクリは、佐渡島内金北山グループにおいて、花被片長、花被片幅、葉身幅で、本州と比較して大きい傾向が見られた。ウラジロヨウラクは雄蕊長において佐渡島の集団が大きかった。訪花昆虫相の比較では両種ともに佐渡島においてのみスズメガの訪花が確認された。これらの結果から、佐渡島における花の大型化にはスズメガ等の大型の昆虫の訪花が影響していると予測された。また、佐渡のカタクリの葉には斑紋がない個体 のみであるため、これが葉の大型化に影響している可能性が考えられた。また、本州におけるカタクリの訪花昆虫数は、佐渡島と比較して少なかった。カタクリの調査を行った早春の平均気温が本州では佐渡より約8℃低かったことから、本州ではフェノロジカルミスマッチが発生している可能性が推察された。