| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-169  (Poster presentation)

局所的なスケール内で共存する2種のスミレ属植物の排他的な分布を駆動する要因は何か
What factors drive the exclusive distribution of two Viola species that coexist within a local scale?

*伊藤嵩将, 渡部俊太郎(鹿児島大学)
*Takamasa ITO, Shuntaro WATANABE(Kagoshima Univ.)

系統的に近縁な複数種がある地域において共存している場合、それらの分布パターンは排他的な分布を示すことがある。これまでの研究では、排他的な分布が成立する理由について、比較的広い範囲においては環境勾配や地理的断絶が強く影響すると考えられてきた。一方で、大きな環境勾配や地理的断絶を伴わない比較的狭い範囲の中で排他的な分布が成立する理由はあまりよく分かっていない。この研究では都市部の比較的狭い範囲(約24ha)で共存するスミレ属2種(スミレ・リュウキュウコスミレ)の分布パターンとその形成要因を2種の生育環境の違いと競争排除を引き起こす種間相互作用の有無に着目し、検討した。分布パターンを調べたところ、2種が混生している場所は非常に少なく、排他的な分布パターンを形成していることが明らかになった。また、2種の生育する場所の環境について調べたところ、生育地の化学的性質には有意な差が見られなかった一方、土壌水分と光環境については、スミレは土壌水分が少なく明るい環境に分布し(スペシャリスト)、リュウキュウコスミレはどの環境にも満遍なく分布する(ジェネラリスト)という違いが見られた。さらに2種の種子を相手種の生育する場所に植え替える実験を行い種子の発芽率を比較したところ、2種ともに自生地との間に有意な差は認められなかった。これらの結果から、環境要因だけでは2種間の排他的な分布を説明できないことがわかった。最後に2種間の排除をもたらす要因として繁殖干渉の有無を受粉実験から調べたところ、スミレからリュウキュウコスミレに対して繁殖干渉が働いている可能性が示唆された。以上の結果から、局所的なスケール内で共存する近縁な2種間の排他的な分布の形成には、繁殖干渉を含む何らかの種間相互作用が影響している可能性が考えられた。


日本生態学会