| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-170 (Poster presentation)
コンクリートの屋上は、通常樹木などが生育することはなく生物多様性の観点から関心をもたれることはない。一方、屋上緑化などの利用法が広まっており、屋上ビオトープの侵入植物の調査により屋上緑化などによる緑の創出が生物多様性につながることも示唆されている。本研究では、動物散布種子などに比べ研究例が少ない風散布種子に注目し、定着する前の飛来種子を掃除機で捕捉することで、風散布種子の潜在的な特徴や屋上における分布の様式を明らかにする。調査は多摩丘陵に位置する明治大学生田キャンパスの3階建て校舎の屋上で、2021年11月16日と2022年2月17日の2回行った。屋上の端を含む9.3m×30mの場所を3×9のコドラートに分け各コドラート内で掃除機をかけた。捕捉した種子は形態ごとに分類し、コドラートごとの種子数、形態ごとの種子数を数えた。校舎の屋上に植物は生育していないが、草本類を含む多くの種子が飛来していた。両調査とも冠毛や翼などを持つ風散布種子の割合が高かった。都市域においては樹林の孤立化が進み鳥類散布型の植物に構成種が偏ることがあるが、樹木のない屋上では風散布種子の割合が高くなると考えられる。コドラートを南、中央、北の3列に分類して比較した。11月の調査では南列の種子数が全体の60%を占めていたが、2月の調査では校舎の北部に生育するサワラ及びヒノキの種子が全体の種子数の97%以上を占め、そのうち57%が北列に分布していた。屋上において風散布種子はまとまって分布し、端の方に堆積する傾向があることが示唆された。コンクリートの屋上で捕捉される種子と緑化された屋上で実際に発芽する植物を比較することで、屋上ビオトープに侵入する可能性のある植物の予想や、植栽土壌に含まれる埋土種子と周囲から飛来した種子の区別などが可能になり、屋上ビオトープの管理に生かすことができる。