| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-171  (Poster presentation)

一回繁殖型多年生草本オオウバユリの開花臨界サイズの集団間変異を生みだす要因の特定
Identification of factors why threshold size for flowering differs among populations of monocarpic perennial herb, Cardiocrinum cordatum var. glehnii

*芳賀奨平, 大原雅(北大・院・環境科学)
*Shohei HAGA, Masashi OHARA(Hokkaido Univ. Env. Science)

オオウバユリは一回繁殖型多年生植物であり、発芽後は一葉個体、複数葉のロゼット個体といった生育段階を経て開花に至る。Hayafune et al. (2019)は北海道内の23集団の開花個体サイズ(花数や地際直径)に関して、集団間変異がある一方で、集団内では年変動が小さく、安定していることを報告している。そこで、千歳(開花個体サイズ小)、北大(開花個体サイズ中)、石狩(開花個体サイズ大)の3集団で開花臨界サイズ(開花に移行するときのロゼット個体の葉面積)を調べたところ、千歳の開花臨界サイズが3集団の中で最も小さいことがわかった。開花臨界サイズは、純繁殖率(個体が残す子孫の期待値)が最大となる個体サイズとされるため (Metcalf et al. 2003) 、本研究は、開花臨界サイズが集団間で異なるのは、集団間で純繁殖率が最大となる個体サイズが異なるからではないかと考え、調査を行った。
開花に移行した場合の純繁殖率と栄養成長後に開花移行した場合の純繁殖率を比較して、開花に移行した場合の純繁殖率の方が大きくなるときにロゼット個体は開花に移行すると予想した。開花に移行した場合の純繁殖率と栄養成長後に開花移行した場合の純繁殖率は、繁殖量(ロゼット個体の葉面積に対して開花移行後につけた花数)、成長率(ロゼット個体の葉面積の1年間の増加率)、死亡率を用いて表すことができ、それぞれ葉面積×(1-死亡率)×繁殖量、(葉面積×成長率)×(1-死亡率)×繁殖量となる。そのため、各集団の繁殖量、成長率、死亡率を調べ開花に移行した場合の純繁殖率と栄養成長後に開花移行した場合の純繁殖率を算出した。その結果、千歳でのみ葉面積が増加すると開花に移行した場合の純繁殖率より栄養成長後に開花移行した場合の純繁殖率が小さくなる可能性が高くなった。以上より、開花臨界サイズの集団間の違いは、集団間で純繁殖率が最大となる個体サイズが異なることが要因である可能性が示唆された。


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