| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-173 (Poster presentation)
植物は多様な被食防御戦術により植食者から身を守っている。防御形質の生産には一般的にコストがかかり,適応度を最大化するためには,成長と防御への資源配分を最適化する必要がある。植物の中には,防御形質に多型がみられるものが存在する。オオイヌタデは,葉にトライコームが密生する有毛型とトライコームが生えていない無毛型の2つの型が知られている。トライコームはオオイヌタデの主要な植食者であるイチゴハムシによる食害回避に有効であることが判明している。有毛型と無毛型の比率は群落により大きく異なっており,生育地におけるイチゴハムシの密度により,有利な型が決まると考えられる。植物が生育環境において適応度を最大化するためには,防御形質以外の様々な形質も影響していると考えられるが,防御形質二型が見られる種において,その他の形質の変異についてはほとんど研究されていない。本研究では,無毛型・有毛型各3系統を同一環境下で栽培し,防御形質二型と関連する様々な形質について調査した。1株ずつポリポットに植え,自然日長・無加温のガラス温室で栽培し,各個体の開花日,草丈,枝分かれ数,乾燥重量,平均種子重および種子数を測定した。その結果,開花は無毛型の方が有意に早く,枝分かれは有毛型の方が多かった。草丈と乾燥重には有意差は見られず,平均種子重と種子数は無毛型の方が有意に重く多かった。有毛型ではトライコーム生産のコストを補うために栄養成長期を長くしている可能性や,より多く枝分かれをして種子食害を回避している可能性が考えられた。また,種子重と種子数の差はトライコーム生産のコストによるものである可能性がある。これらの形質が防御形質と連動することにより,オオイヌタデの適応度にどのように貢献しているのか,今後さらなる検証が必要である。