| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-174 (Poster presentation)
日本における人と植物の関係を考えるとき、バラ科サクラ属のサクラ類は特別な地位を占めている。その中で、ヤマザクラ(Cerasus jamasakura var. jamasakura)は古くから愛でられきた野生種である。近年、ヤマザクラが自生する二次林の管理放棄と高齢化これに伴う自然遷移によって、ヤマザクラ樹勢の衰退がみられるようになっている。ヤマザクラの生育 状態の研究としてはこれまで根系分布と樹木活力度および土壌硬度の検討(今西ら2009)、開芽フェノロジーの個体差分布とその指標性の検討(飯田ら 2013)、ヤマザクラの開花に対する立地環境と周辺競争木の検討(田端 2020)などの先行研究があるものの、二次林の中でのヤマザクラがどのように成長しているかは明らかになっていない。本研究では、岡山県真庭市の鳥取大学教育研究林「蒜山の森」において、自生するヤマザクラを対象木として、周辺の競争木との関係を検討することを目的とした。
ヤマザクラを中心にして設置した15×15mの10カ所のプロットで競争木を27種268本確認した。その中で、アカマツ、リョウブ、クヌギが本数、胸高断面積合計(BA)ともに競争木の構成する主要な樹木であった。特に、アカマツが多かった。直径階分布はL字型で、対象木は10 ~ 25cmに出現し、競争木は5~ 10 cmの小さい階級が多かった。アカマツではほとんど高木層(15m以上)に集中分布し、対象木とアカマツ以外の競争木は亜高木層から低木層(5 ~ 15m)付近に集中分布した。このことから、プロット内の光条件にはアカマツの強い影響が考えられた。また、他の競争木は対象木と同じ階層に成長し、空間競争に影響している可能性がある。