| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-180 (Poster presentation)
ギンリョウソウMonotropastrum humileはツツジ科の菌従属栄養植物である.菌従属栄養植物は生物多様性の保全上重要と考えられているが,個体群維持機構等の保全に必要な情報について未解明な部分が多い.本研究では,ギンリョウソウの個体群維持機構を解明する一助としてサイズ構造,空間分布を経年的に調べた.調査は,札幌市の平岡公園(以下:平岡)と西岡公園(以下:西岡)で行った.各調査地でプロットを設置し,ギンリョウソウの地上茎数,植物高,位置,プロット内の樹種を記録し,サイズ構造と空間分布様式およびギンリョウソウ周辺の樹種構成を分析した.ギンリョウソウは,2020年に平岡で150本,西岡で222本,2021年に平岡で84本,西岡で324本が確認された.また,平岡の植物高は2020年より2021年で有意に大きかったが, 西岡では年による違いはなかった.これらのことは,ギンリョウソウ個体群の開花に年変動があることを示唆した. L関数を用いた解析は, 平岡,西岡のギンリョウソウが0 < r < 5の範囲で集中分布することを示した.平岡はコナラ, エゾヤマザクラ, エゾイタヤが優占する林, 西岡はミズナラ, エゾイタヤ, シラカンバ, アズキナシが優占する林であった. ギンリョウソウ個体の半径2m以内の樹種構成は,平岡でコナラ,西岡でミズナラの優占度がより大きかったことから, ギンリョウソウの分布はブナ科樹木周辺に偏ることが示唆された.一般的に植物の空間分布様式は,生物的・非生物的環境要因に強く依存し,特に対象の集中分布は,光や土壌養水分といった資源の集中が生じていることを反映する.ギンリョウソウは,葉緑素を持たず菌糸を介して周辺樹木と繋がることで炭素を獲得し,生育することから,ギンリョウソウのサイズ構造や空間分布は,周辺の生物的・非生物的要因の分布の影響を受けていると考えられる.