| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-185  (Poster presentation)

異なる色の夜間照明が河川法面の生物多様性におよぼす影響
The influence of street lighting with different colors on the biological diversity of river embankment.

*岡本直歩, 早坂大亮(近畿大学)
*Nao OKAMOTO, Daisuke HAYASAKA(Kindai Univ.)

 都市化や交通網の発達等によって、夜間照明は増加の一途をたどる。夜間照明により夜間の暗闇は打ち消され、規則的な光周期の下で適応進化してきた生物にさまざまな影響を引き起こす。なかでも植物の場合は、成長量やフェノロジー等に影響がおよぶとされ、さらに影響の程度は照明の色によって異なることも指摘されている。さらに、街灯の種類も多岐にわたり、近年はLED街灯が主流になりつつある。植物は生態系の基盤であり、植物への影響は生物多様性の保全の上で無視できない。特に、河川域は生物多様性の創出の場のみならず、治水機能の維持に直結するため、夜間照明が河川の植物群落に与える影響の把握は欠かせない。しかし、夜間照明、特にLED街灯による河川周辺の植物群落への影響を定量的に評価した研究は未だ見られない。そこで本研究では、夜間照明(LED)の有無や色が植物の成長量やフェノロジーにおよぼす影響と、それを介した植生変化への波及の程度について比較した。
 本研究は、奈良市内を流れる一級河川富雄川の中流域に位置する河川法面において、2021年の8月から10月にかけて実施した。調査地を無街灯区とLED街灯区(琥珀色、白色)に分けて、週に1回の頻度で植生調査をおこなった。解析の結果、琥珀色LED下の高茎草本植物の成長率は白色LED区の植物とくらべ有意に高かった。また、街灯設置区のイネ科草本の開花は非街灯区とくらべ、3週間程度遅延していた。以上のことから、LED夜間照明も従来型の街灯と同様に、河川法面の植物の成長・フェノロジーに影響をおよぼす施設である可能性が明らかとなったが、植生の種組成にまで波及するほどの影響は、現時点で確認されなかった。今後も継続して調査を進める。


日本生態学会