| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-187  (Poster presentation)

亜熱帯から亜寒帯における木本性つる植物の分布パターン
Distribution patterns of lianas from subtropical to subarctic regions in japan

*日下部玄(東京大学), 森英樹(森林総合研究所), 日浦勉(東京大学)
*Gen KUSAKABE(The University of Tokyo), Hideki MORI(FFPRI), Tsutom HIURA(The University of Tokyo)

木本性つる植物は特に熱帯に豊富な植物群で,森林の生産性や樹種構成に影響を及ぼす。
全球的にはつる植物の種数・幹数は,他の植物群と比較して,緯度の増加に伴い急激に減少する。これはつる植物の低温に対する脆弱性が原因と考えられている。一方,亜熱帯から亜寒帯域では広域スケールで気候・土壌条件・森林構造がつる植物の分布に及ぼす影響や,つる植物のバイオマスの分布を評価した研究はほとんどない。また,温帯や亜寒帯では降雪のような熱帯では見られない要因がつる植物の分布に関わる可能性もある。
つる植物は資源要求性が高く強光下に生育する植物群と見なされがちであるが,その形質や成長戦略は多様であり,これらはつる植物の登攀様式との対応が示唆されている。特に付着根で立木に登攀するRoot climber(RC)は被陰環境に分布する傾向や葉の窒素量の低さが指摘され,”典型的な”つる植物とは異なる性質を持つと考えられる。
本研究では温帯域を中心につる植物の種・幹数・バイオマスの分布パターンを登攀様式の違いに着目して明らかにすることを目的として,亜熱帯から亜寒帯を含むモニタリングサイト1000森林コアサイト20地点においてつる植物の毎木調査を行い,気候・土壌条件・立木の毎木調査に関する公開データを用いて解析を行った。
対象地域では巻付きにより登攀を行うTwining climber(TC)とRCに分類されるつる植物が幹数の約95%,幹断面積合計(BA)の約90%,種数の約78%を占めた。 幹数ではTCは年平均気温と正,土壌CN比と負,RCは土壌有機物重量と負,積雪深と正の関係が見られた。BAではTCは土壌CN比と負,RCは年平均気温と負の関係が見られた。種数はつる植物全体では年平均気温と年間降水量に対して正,土壌有機物重量と負の関係が見られたが,TCでは年間降水量と正,RCでは土壌有機物重量と負の関係が見られた。
発表では,上記に加えて調査地の森林タイプや遷移段階,立木の分布パターンとの関係も踏まえた考察も行う。


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