| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-192  (Poster presentation)

大都市の未利用地が創出する植物多様性の広域評価 【B】
Broad-scale assessments of plant diversity fostered by vacant lots in the megacity 【B】

*前原果歩, 岩知道優樹, 冨髙まほろ, 佐々木雄大(横浜国立大学)
*Kaho MAEHARA, Yuki IWACHIDO, Mahoro TOMITAKA, Takehiro SASAKI(Yokohama national Univ.)

 世界中の多くの都市で人口の大幅な減少に伴う「都市の縮退」が将来的に進行すると予測されている。都市の縮退に伴って発生する現象の1つに、都市内部において小面積の未利用地が増加し、都市の中に点在するようになることが挙げられる。
 未利用地は社会的・経済的な不利益をもたらすとされている。具体的には災害や犯罪の発生の助長、景観の悪化、周辺の資産価値の低下が挙げられる。それゆえ、未利用地は一般にネガティブな存在として認識されていることが多い。
 一方で、未利用地は都市の自然環境にとって重要な資源であるという見方もある。未利用地は、宅地や道路用地といった都市的土地利用の割合が高い都市において、自然発生的な植物群集がみられる特徴的な場所である。自然植生に覆われた未利用地は都市の生物多様性の保全に貢献し、周辺の都市住民に生態系サービスを提供する可能性がある。
 ただ、未利用地の植物群集に関する知見は乏しいのが現状である。特に、未利用地に生育する植物の群集集合プロセスは未だ明らかにされていない。さらに、日本国内の未利用地を対象とした研究例は極めて少ない。都市の縮退に伴って増加することが予測されている未利用地における植物の群集集合プロセスを明らかにすることにより、未利用地を活用した都市の生物多様性保全政策の策定や未利用地の有効な利活用方法の決定に貢献する知見を提供できると考えられる。
 本研究では横浜市が保有・管理する未利用地71か所を対象に、2021年9月~10月に植物と土壌の調査を行った。調査対象の未利用地は横浜市内の広範囲に位置しており、周辺の緑被率や大規模緑地からの距離が異なる。なお、調査は2022年4月~5月にも行う予定である。本研究では現地調査の結果をもとに、未利用地の植物群集の種組成や多様性と、土壌含水率や土壌硬度、周辺の緑被率などとの関連性を解析し、未利用地の植物群集の決定要因や集合プロセスを明らかにしたい。


日本生態学会