| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-194 (Poster presentation)
気候変動の影響を受けやすい高山生態系では ,急速な植生変化が進行している. 北海道大雪山 国立公園にある五色ヶ原では,1972年から2012年の40年間に広葉草本植物の減少,低木植物と禾本類の増加などの変化が報告されている.一方, 広葉草本植物の中には減少している種だけでなく,増加している種も報告されており,先に述べた生活型だけでは変化パターンの一般化は困難である.本研究は,「高山植物の優占度の変化は種特異的な機能形質の違いによって説明できる」との仮説に基づき,機能形質と優占度の変化量との関係を明らかにすることを目的とした.機能形質に関しては地上部だけでなく,これまで高山植物では極めて限定的にしか調べられていない地下部の機能形質に着目することで,気候変動への応答を引き起こす環境要因の解明を目指した.
生育最盛期の7月中旬から8月上旬にかけて,11種計55個体を対象にサンプルを採取した.このサンプルについて,地上部については比葉面積(SLA),葉乾物重量(LDMC),葉のCN比,地上部総重量の4形質を測定した.地下部については,細根の比根長(SRL)・比根面積(SRA)・直径・乾物重量 (RDMC)・組織密度・根端密度・CN比とともに,根と地下茎の総重量の9形質を測定した.一般化線形モデルによる解析の結果,これまでに五色ヶ原で重要性が示唆されていた植生高などの地上部の形質だけでなく,地下茎のバイオマスなど地下部の形質が広葉草本の優占度の増減に関わっていることが示唆された.