| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-196  (Poster presentation)

田畑半沢のハンノキ・トネリコ林における湿生植物群落の組成と構造および更新状況
Composition, structure and regeneration of Alder and Japanese ash wetland plant communities in Tabata Hanzawa

*中田小春, 大窪久美子(信州大学)
*Koharu NAKATA, Kumiko OKUBO(Shinshu Univ.)

長野県上伊那地方の田畑半沢はハンノキ・トネリコ林が残存し、林床にはザゼンソウ等の希少・湿性植物種が生育し、自然性が高く(馬場2003)、生物多様性保全上、重要である。本報告から約20年が経過しているが、地域での林分への認識は無く、課題となっている。そこで本研究の目的は、ハンノキ・トネリコ林と林床群落の組成や構造、更新状況と立地環境との関係性を把握し、保全策を検討することとした。
調査は大プロット10個(5m×5m)に小プロット(2m×2m)を各3個、計30個を設置した。毎木調査は大プロットで、林床植生と幼個体調査、立地環境調査は小プロットで実施した。全出現種数は121種で、外来植物率は3%(4種)と低かった。TWINSPAN解析の結果、全小プロットはA~Fの6群落型に分類された。全群落型の共通種群としてヒダアザミなどの希少植物が出現した。また共通種群には園芸種のアオキなどのトネリコ・ハンノキの競合種となり得る種が出現した。毎木調査の結果、ハンノキ個体群およびトネリコ個体群ともに分布範囲には馬場(2003)と大きな変化がないことが確認された。また、トネリコの競合種としてスギ(植林)が、C・D群落型ではミヤコザサが確認された。幼個体について、トネリコはA・C・D・E群落型で確認され、ハンノキは無かった。相対光量子束密度は1.6%~11.74%の値をとり、全群落で低かった。
次に各群落型を林床植生とトネリコ・ハンノキ個体群の自然性の両観点から評価した。林床植生の観点から自然性が高い群落としてはA・B・F群落が挙げられた。一方、トネリコ・ハンノキ個体群の観点から自然性が高い群落としては、C・D・E群落が挙げられた。保全策としては乾燥化を促すミヤコザサの刈り取りや、保全すべき希少種や湿性植物の上層を被覆するスギ等、競合木本種を除伐や間伐することによる光環境の改善などが提案された。


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