| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-198 (Poster presentation)
チャマダラセセリは環境省版絶滅危惧ⅠB類(EN)に指定され、生息地である半自然草原の減少のため、危急性が高い種で、幼虫の食草はバラ科キジムシロ属のミツバツチグリとキジムシロである。メスは裸地に近い極めて植被率の低い特殊な草地環境下で食草の葉裏に産卵する(福田1984、 田下1989、江田・中村2017)ため、保全策を検討するには草地群落の把握が必要である。岩手県での群落研究(新井・大窪2014)はあるが、本研究の対象地である岐阜県では群落の詳しい情報は乏しい。そこで本研究の目的は岐阜県におけるチャマダラセセリの産卵地の畦畔草地における群落の組成と構造および立地環境条件等との関係性を把握することとした。
畦畔地に調査プロットが32個(各2m×2m)設置され、植物社会学的手法による植生調査および立地環境調査(相対光量子束密度、土壌含水率、土壌硬度)が実施された。なお、チョウ類に関する調査は日本チョウ類保全協会によって実施されたものである。
39科70種の植物種が出現した。全調査プロットでススキが優占していた他、岐阜県RL種としてはオミナエシおよびベンケイソウ、コオニユリが出現した。TWINSPAN解析の結果、全プロットは8群落型に、全出現種は8種群に分類された。本種の産卵地に適している環境である、ミツバツチグリの優占度が高く、植被率が低い群落型としては、2つの群落型(3・6)が確認された。特に群落型3では産卵数が多かった。また、植被率の低い群落型ではオミナエシやワレモコウ、ツリガネニンジンなど、在来草原性植物の出現が高かった。ミツバツチグリの優占度と群落高には有意な負の相関があり(p<0.05、Spearmanの順位相関係数)、群落の発達とともに食草が減少することが示された。植被率や群落高を低下させ、食草の優占度を維持するための刈り取り管理等の必要性が示唆された。