| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-199  (Poster presentation)

積雪深の異なる隣接したブナ林における種組成及び森林構造の違い
Difference in species composition and stand structure between neighbouring beech forests with different snow depth

*蛯名敢大, 石田清(弘前大学)
*Kanta EBINA, Ishida KIYOSHI(Hirosaki Univ.)

 積雪環境の違いに伴うブナ群落の違いが調べられてきた。積雪深の増加に伴って種多様性が減少し、日本海側の多雪環境にはブナ優占林、太平洋側の少雪環境にはブナ混交林が形成される傾向にある。また、積雪深2mを境にブナ個体群構造の違いが見られるという報告もある。積雪環境の違いが群落にどのように影響しているかを解明するためには、距離が近く積雪深が異なる場所に調査地を設定することが望ましい。しかし、このような調査地設定を行った上で群落を比較した事例は限られている。
 本研究では、青森県八甲田山系八幡岳の標高1000mの稜線付近に形成されたブナ-チシマザサ群落において、平均積雪深3m以上の多雪区と1m前後の少雪区を隣接するように設定した。各区画30m×80m内で胸高周囲長(以下GBH)15cm以上の木本植物を対象に種・GBH・展葉及び落葉時期を調査した。また、各区画に2m×2mの方形区を5区画設定し、チシマザサの稈数及び群落高を調査した。⑴種組成 ⑵ブナ個体群構造 ⑶展葉及び落葉時期 ⑷チシマザサ群落構造の4項目について区画間で比較した。
 種組成については、ブナの相対優占度は多雪区の方が大きく、種多様性の指標であるシンプソン多様度指数は少雪区の方が大きかった。ブナのサイズ分布について見ると、多雪区はGBH15cm~30cmの背丈の低い若齢個体が最も多く、少雪区はGBH45cm~60cmの林冠構造の中層を占める個体が最も多かった。展葉時期は、ブナ成木については多雪区と少雪区での違いは認められなかったが、ブナ若齢木については多雪区の方が少雪区よりも遅かった。落葉時期は、ブナ成木と若齢木ともに多雪区の方が遅い傾向が見られた。多雪区と少雪区の林床は共通してチシマザサに覆われ、多雪区よりも少雪区の方が稈数が多く、群落高が低かった。
 以上の結果から、種組成やブナ個体群のサイズ分布に加え、チシマザサ群落構造やブナの展葉及び落葉時期が、積雪環境に応じて変化している可能性が示唆された。


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