| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-201  (Poster presentation)

種間交雑と倍数化により形成された白花エンレイソウ属植物の分布と系統に関する新知見 【B】
New insights on current distribution and phylogenetic situation of white-flowered Trillium species formed by hybridization and polyploidization 【B】

*早川貴将, 相田大輔, 高木雄登, 大原雅(北大・院・環境科学)
*Takashi HAYAKAWA, Daisuke AIDA, Yuto TAKAGI, Masashi OHARA(Hokkaido Univ. Env. Science)

日本国内のエンレイソウ属植物(Trillium)は雑種を含む9種の生育が報告されている。そのうち、8種についてはオオバナノエンレイソウ(2倍体, オオバナ)、エンレイソウ(4倍体)、ミヤマエンレイソウ(4倍体, ミヤマ)の3種の基本種による種間交雑と、形成された種間雑種の倍数化により種分化してきたことが知られている(Kurabayashi 1958, Kubota et al. 2006)が、Fukuda et al.(1996)で報告された白い花弁を有するカワユエンレイソウ(4倍体, カワユ)については種形成過程が明らかになっていない。またAida et al.(2019)は、これまでカワユと報告されていた個体の倍数性をフローサイトメトリー法により調査し、これらが6倍体シラオイである可能性が高いことを示唆している。そこで本研究は、エンレイソウ属植物の白花種全5種の系統関係の解明を目的とする中で、今回は種形成過程が明らかになっていないカワユエンレイソウに関する調査結果を報告する。Fukuda et al.(1996)で報告されている分布及び白花種全5種の形態的特徴に基づき、カワユと同定される個体及び同所的に生育するオオバナとミヤマのサンプリングを行い、形態形質を測定した。そして、これらの個体の倍数性を染色体の本数により確認した。その結果、今回カワユ、オオバナ、ミヤマとしてサンプリングした個体はすべてFukuda et al.(1996)の分類に適合していることが確認できた。そして、今回サンプリングしたオオバナは染色体が10本の2倍体、ミヤマは染色体が20本の4倍体であることが確認できたが、カワユと同定された個体の染色体は殆どが30本の6倍体であることが分かり、少なくとも4倍体のカワユ個体は認められないことが判明した。以上の結果から、現状カワユエンレイソウは生育していないことが明らかとなり、これまでカワユと報告されていた個体が、オオバナとミヤマの種間雑種である3倍体シラオイエンレイソウの倍数化により形成された6倍体シラオイエンレイソウである、という可能性がより高まった。


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