| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-203 (Poster presentation)
野外で同時期に開花する植物はしばしば送粉者を種間で共有することが知られている。送粉者の共有は自種の繁殖成功を高める場合(正の効果)と低下させる場合(負の効果)がある。例えば、送粉者を共有することで送粉者の訪花頻度が増加することは、一般的には繁殖成功を高めると考えられるが、逆に他種の花粉の付着が自種の繁殖に負の効果をもたらすときは、送粉者の共有は繁殖の成功を低下させると考えられる。こうした効果は、同時開花する植物種の花の色や形の組み合わせとしても現れると考えられており、正の効果が大きい場合は色や形がよく似た種が同時開花する傾向が見られ、逆に負の効果が強い場合は色や形が大きく異なった種同士が同時開花すると予想されている。このような同時開花植物の花の色や形の組み合わせは、草本や木本といった生活形の間でも違いがある可能性が知られているが、この点を定量的に調査・比較をした研究は非常に少ない。そこで本研究では、同時開花する植物の形態の類似度が草本や木本といった生活形によってどのように異なるのかを明らかにすることを目的とした。
調査は、鹿児島大学付属高隈演習林内の常緑広葉樹二次林において2021年4月から11月までの期間で行った。週1回開花した虫媒花植物の観察を行い、開花していた種名と花色、花筒長、花筒幅、相称性、を記録した。
調査の結果、草本138種、低木とツル性木本27種、高木28種が観察された。開花期間の長さの平均は草本が約7週であったのに対して、低木とツル性木本は約5週、高木は約3週と違いがみられた。また、高木の花はすべてが放射相称であり、花筒長は9割が2mm未満であった。それに対して、草本の花は左右相称花が全体の約2割を占め、花筒長にも変異がみられた。
これらの結果から、花形質の集合パターンは植物の生活形の間で違いが見られ、高木は草本に比べて形のよく似た花が同時開花する傾向があることが示唆された。