| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-205  (Poster presentation)

奈良県春日山における雌雄異株樹種と両性樹種の遺伝的多様性の比較
Comparison of genetic diversity between dioecious and hermaphroditic tree species in the Kasugayama Forest Reserve, Nara, Japan

*榎阪翠優(大阪市立大学), 名波哲(大阪市立大学), 嶋本直紀(大阪市立大学), 徳本勇人(大阪府立大学), 吉原静恵(大阪府立大学), 伊東明(大阪市立大学)
*Miyu ESAKA(Osaka City Univ.), Satoshi NANAMI(Osaka City Univ.), Naoki SHIMAMOTO(Osaka City Univ.), Hayato TOKUMOTO(Osaka Prefecture Univ.), Shizue YOSHIHARA(Osaka Prefecture Univ.), Akira ITOH(Osaka City Univ.)

雌雄異株植物は、両性植物と比べて花粉散布や種子散布の機会が制限されるため、集団の維持に不利を抱えている。それにも関わらず、雌雄異株植物は多様な分類群でみられ、また地球上の様々な環境下に分布している。雌雄の性の機能を個体レベルで分業することの利点として、必ず他殖によって種子を作ることから、近交弱勢が現れにくく、集団内の遺伝的多様性が高くなることが考えられる。この利点によって雌雄異株植物は繁殖機会の不利を補い、両性植物と共存しているのかもしれない。この仮説を検証するために本研究では、系統的に近縁な雌雄異株植物と両性植物の間で、近親交配の程度と遺伝的多様性を比較した。また、近交弱勢がどの生活史段階に影響するのかを調べるために、生活史段階ごとに比較を行った。
奈良県春日山原始林に生育するクスノキ科とウコギ科の両性樹種3種(ホソバタブ、ヤブニッケイ、コシアブラ)、雌雄異株樹種5種(イヌガシ、シロダモ、カゴノキ、カナクギノキ、タカノツメ)の種子、実生、成木の3つの生活史段階の個体からDNAを抽出し、MIG-seq法で得た一塩基多型の情報から、近交係数と塩基多様度を求めた。その結果、雌雄異株樹種の近交係数は小さく、近親交配が回避されていることが示された。また、両性樹種では、種子集団よりも実生集団の近交係数が小さく、近交弱勢によるホモ接合体の頻度の低下が示唆された。一方、集団の遺伝的多様性には違いがみられず、個体群のサイズや空間構造の影響が大きいと考えられた。さらに、両性植物から雌雄異株植物に向かう進化の途上にあると言われる不完全雌雄異株植物と両性植物の比較のために、ムクロジ科とサカキ科の不完全雌雄異株樹種2種(ウリハダカエデ、ヒサカキ)、両性樹種2種(イロハモミジ、サカキ)についても同様の調査を行った。


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