| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-208  (Poster presentation)

一回繫殖型植物の開花当年葉の役割-オオウバユリ(多年生)とヒマワリ(一年生)の比較-
The roles of current leaves on flowering individuals in monocarpic plants - a comparison between Cardiocrinum cordatum and Helianthus annuus -

*松窪祐介, 大原雅(北大・院・環境科学)
*Yusuke MATSUKUBO, Masashi OHARA(Hokkaido Univ. Env. Science)

  オオウバユリは一回繁殖型多年生草本であり、長年の栄養成長段階を経た後、開花し、当年中に結実し枯死する。栄養成長段階では、ロゼット葉による光合成を通じて地下の鱗茎に資源を貯蔵する。したがってこのロゼット葉は、翌年および開花に向けた資源貯蔵の役目を担うと考えられる。一方、開花個体でも当年葉が形成されるが、一回繁殖型のため資源貯蔵に機能しているとは考えられない。そこで、オオウバユリの開花個体における当年葉の役割を調べるために摘葉実験を行い、生長、そして花や果実の形成への影響の有無を調査した。開花個体の成長時期による摘葉の影響の違いを考慮し、茎伸長期、蕾形成期、果実成熟期に相当する3つの摘葉時期を設けた。一方、繁殖に向けた貯蔵資源を作るオオウバユリの葉の役割を調べる上で、貯蔵資源を作ることなく成長、繁殖する一年生植物の葉の役割と比較をするため、ヒマワリを対象に同様の摘葉調査を行った。ヒマワリは当年に栄養成長段階を経て生殖成長段階に至ることから、個体の成長段階における摘葉の影響の違いを考慮し、栄養成長段階と生殖成長段階に相当する2つの摘葉時期を設けた。
  摘葉実験の結果、オオウバユリは茎伸長期の摘葉処理により開花時の草丈と花数がコントロールと比べ低下、減少した。また、果実重については、すべての時期の摘葉処理でコントロールと比べ減少する傾向が認められた。これらの結果からオオウバユリの開花当年葉は、茎伸長期には個体の成長や器官成熟のための資源合成の役割を担うが、蕾形成期以降は果実成熟のための資源合成の役割を担うことが示された。一方ヒマワリでは、栄養成長段階の当年葉が個体や器官の形成からの資源合成の役割を担うことも確かめられた。したがって、オオウバユリの当年葉は、果実成熟のための資源合成を担うという点で、個体の形成からの資源合成を担うヒマワリの当年葉とは違いがあることが明らかになった。


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