| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-209 (Poster presentation)
異型配偶子接合は雌雄差の起源である。異型配偶は同型配偶から進化してきたと考えられている。海産緑藻では過酷な環境ほど雌雄配偶子の異型度合いが高い傾向があると示唆されている。また配偶システムと生息場所の環境は密接に関係していると考えられている。例えば潮間帯上部に生息するアオサ藻綱の海産緑藻エゾヒトエグサは潮汐を利用した配偶子の同時放出を行うことで接合効率を上げている。接合できなかった一部の配偶子は単為発生を行う。しかし、この同時放出の仕組みは干満の差が小さい環境では上手く機能していないと予想される。そのためエゾヒトエグサの有性生殖において過酷な環境であると予想される。この環境の違いにより配偶子サイズは異なっているかもしれない。これを調べるため集団の配偶子サイズが報告されている北海道室蘭市に比べて干満の差が小さい日本海沿岸の小樽市の集団に着目した。小樽集団の成熟個体を採集し配偶子放出を誘導した。雌雄5個体ずつで配偶子嚢サイズ(体積)を計測した。エゾヒトエグサの配偶子嚢が等割することで配偶子を生産することを利用して配偶子サイズを計測した。配偶子放出は数日かけて起こったため同時放出の調節は上手く機能していないことが示唆された。配偶子サイズを室蘭集団と比較したところ、雄で違いは見られなかったが雌は室蘭集団のものに比べて大きかった。また配偶子嚢サイズと分裂回数について解析した結果、小樽集団の雌は室蘭集団に比べて配偶子が大きくなるように分裂する傾向が見られた。これまでの我々の研究から配偶子サイズが大きいほど単為発生による生存率が高くなることが示唆されているが雄配偶子サイズに違いがないことから小樽集団は単為発生ではなく主に有性生殖により繁殖していると考えられる。以上の結果から潮汐幅の違いによる接合効率の違いにより集団間で雌雄配偶子の異型度合いが異なっていることが示唆された。