| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-211  (Poster presentation)

ヤブツバキにおける厚い花筒はメジロによる送粉への適応か?
Sturdy petals function as perch in ornithophilous Camellia japonica.

*村上渚, 矢井田友暉, 宇治田京子, 大谷素司, 丑丸敦史(神戸大学)
*Nagisa MURAKAMI, Yuki A YAIDA, Kyoko UJITA, Motoshi OHTANI, Atushi USHIMARU(Kobe Univ.)

動物に送粉を委ねる植物は、送粉者の形態や行動に適合した花構造や形態を持つ。花冠は、色や模様、匂いによる送粉者の誘引や花蜜の保持、送粉者の取り付き場所の提供のように多様な機能を有している。鳥媒花では、一般に赤色で筒型の花冠を持ち、花筒内に大量の蜜を分泌することが知られているが、個花の花冠が取り付き場所となることは極めて稀である。鳥媒花植物では、花序茎や花序、枝、また特殊化した止まり木など虫媒種に比べて頑健な器官が送粉者の取り付き場所となっていることが報告されている。
 本研究では、ヤブツバキ(Camellia japonica)において、主要な送粉者であるメジロが取り付き場所として花冠をもっぱら利用していることを報告する。野外調査では、訪花観察によって送粉者の取り付き場所の利用頻度を定量化した。また、メジロの取り付き場所として花冠が特殊化しているか明らかにするために、花冠強度と花冠構造について、近縁虫媒種であるユキツバキ(C. rusticana)の花冠との比較を行った。
 研究の結果、ヤブツバキは花を斜め下向きに咲かせ、高頻度で花冠の下部が取り付き場所としてメジロに利用されていることが示された。また、ユキツバキに比べ、ヤブツバキでは花弁がより分厚く、花冠が筒状となっていることが明らかとなった。本発表では、ヤブツバキの花冠がメジロの形態及び訪花行動に適応しているかについて議論する。


日本生態学会