| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-213 (Poster presentation)
被食散布型植物にとっての主な種子散布者となる鳥類は、果実の存在や成熟度を認識するシグナルの一つとして、果実の色を用いることが知られている。そのため、果実の色は植物の繁殖成功や集団の維持を左右する重要な形質である。適応的な果実の色に関わる要因を探るため、生育地の緯度、生活形、系統関係などに注目した研究が行われている。これらの研究をさらに発展させるために、本研究ではまず、鳥類は4色型色覚を持つことから、果実を認知する際にヒトの可視光に加え紫外線領域の波長も利用することに注目した。また、自然環境下において、果実によって反射され鳥類の眼に届く光は、その場の光環境にも左右される。実際に、光環境の違いによって、種子散布の観点から適応的な果実の色が異なることが過去の研究で示唆されている。したがって光環境が果実の色に影響を与える可能性も考慮した。
日本各地から採取した被食散布型植物281種の果実について、分光光度計を用いて紫外線領域も含めた果実の分光反射率を測定した。その結果、黒色、赤色というように、これまで定性的には同色に分類された果実であっても、紫外線領域の反射率や明度にはばらつきがあることが定量的に示された。本研究では、この果実自体の特徴に加えて、緯度、季節、開空度によって異なる光環境の影響を考慮した。各種の分布域、結実期、生育環境に対応した太陽光スペクトルと果実の分光反射率を掛け合わせ、結実個体がおかれた環境下での果実の分光反射量を求めた。その結果に基づき、果実の色が光環境から影響を受ける可能性と、果実の分光反射量と様々な生態特性との関係性について考察する。