| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-215 (Poster presentation)
損傷時の萌芽再生に備えた養分貯蔵の多寡が種子サイズ変異の一因との仮説を立て、コナラとシラカシを材料に検討を行った。野外の平均・分散を反映させた重量の堅果を栽培し、当年生実生を展葉完了直後に地際近くで切除して地上部を除去し、1ヶ月後と生育シーズン終期に無処理個体とともに採取した。
一般に大種子由来の実生の損傷時の再生成績が良いことは既知である。しかし大種子由来の実生は無損傷時の成長が良いことも知られ、また再生しても他個体との競争があることを考慮すると、損傷リスクへの対応が種子を大型化させる進化的要因とは必ずしも言えない。
そこで本研究では、萌芽再生率・再生量に加え、修復率 [=切除直前の自サイズに戻る能力] および、回復率 [=同時期の無損傷個体の成長に追いつく能力] を定義して推定し、初期堅果重との関係を調べた。
コナラではほぼ100%萌芽再生した。一ヶ月後に再生した地上部の重量、茎高さ、葉面積は堅果重が大きいほど比例以上に大きく、またそれらの修復率・回復率はどちらも大きな堅果ほど高くなる傾向にあった。特に茎高さの回復率で顕著だった。一方シラカシの萌芽再生率は5割強で堅果重に依存せず、再生サイズも小さかった。測値はどれも堅果重とともに上昇したが、しかし修復率・回復率はともに堅果重と正の相関がないか極めて小さかった。
両種のこれらの違いは、損傷前の展葉完了時において、堅果が大きいほど、コナラでは比例以上に地下部の重量、シラカシでは比例以上に地上部の重量が大きかったことと対応している。資源に余裕がある大堅果では、コナラでは損傷リスク対応、シラカシは通常の成長により多くの資源配分を行っていると解釈できる。堅果重の平均値と変動係数はいずれもコナラの方が有意に大きかった。以上から、種間およびコナラ種内の傾向において冒頭の仮説は支持されたと言える。