| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-216  (Poster presentation)

受粉後に働く繁殖干渉緩和機構の集団間比較
Post-pollination mechanism mitigating the reproductive interference in native Oxalis corniculata sympatric with alien O. dillenii

*星野佑介(東京学芸大学), 堀江佐知子(東北大学), 牧雅之(東北大学), 堂囿いくみ(東京学芸大学)
*Yusuke HOSHINO(Tokyo Gakugei Univ.), Sachiko HORIE(Tohoku Univ.), Masayuki MAKI(Tohoku Univ.), Ikumi DOHZONO(Tokyo Gakugei Univ.)

 異種花粉の受粉によって,不稔な雑種の形成や同種交配が阻害され,適応度が低下することを繁殖干渉という。ある植物種が近縁種と同所的に生育するとき,繁殖干渉を緩和する機構が進化する例が知られている。カタバミ(Oxalis corniculata)には,花形態が異なる2タイプの個体(等花柱型と長花柱型)が存在する。カタバミは外来種オッタチカタバミ(O. dillenii)と同所的に生育する場合があり,送粉昆虫のコハナバチによって異種交配の可能性がある。本研究では,在来種カタバミと外来種との繁殖干渉について,等花柱型と長花柱型の花型間の比較と,繁殖干渉が外来種との同所性と関係しているかどうか検討した。
 2種の同所的集団と在来種の単独集団から採取した栽培株を用いて,受粉実験を行った。等花柱型,長花柱型と外来種のそれぞれで,同種交配・種間交配・混合花粉交配を行った。混合花粉交配で得た子孫については,種子を発芽させてから,核ITS領域の遺伝子型を用いてからの雑種判定を試みた。その結果,(1)カタバミを胚珠親とした時,外来種と同所的な集団の個体は,異種間交配の種子生産量が低かった。一方,単独集団では,雑種種子数は同種交配による種子数と同程度だった。(2)混合花粉交配による雑種種子の割合は,外来種と同所的な長花柱型では,雑種種子はほとんど検出できなかった。等花柱型(外来種と同所)では雑種種子の割合は16.5%だった。単独集団の長花柱型では,混合花粉による種子がほとんど発芽しなかった。
 以上の結果をまとめると,単独集団では,外来種との雑種が形成されやすく,種子はほとんど発芽せず,外来種の影響を受けている可能性が示唆された。同所的な集団では,長花柱型は,等花柱型よりも外来種からの繁殖干渉を緩和していると考えられる。今後,比較集団を増やして検討する必要がある。


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