| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-217 (Poster presentation)
植物にはさまざまな微生物が生息しており、植物にとって有害なものから無害なものが知られている。これまでに多くの研究が植物の微生物叢を調査してきた。しかしこれらの多くは葉圏や根圏に関する微生物叢の研究であり、種子・果実・花など、植物の繁殖に直接関わる器官の微生物についてはあまり知られていない。その中でも種子の微生物叢は、植物個体の微生物叢の出発点として、その後の成長・繁殖に影響を与えるため重要であることが予想される。かつて種子に生息する微生物は表面に付着しているだけだと考えられてきた。ところが、種子の表面殺菌後も種子から微生物が分離されることが報告され、胚や胚乳には微生物(種子内生菌)が普遍的に存在することが明らかになってきた。しかし、多くの種子内生菌の研究では栽培植物の種子を複数まとめて解析しており、野生植物における種子内生菌叢の個体内、個体間の変異についてはほとんど研究はない。
本研究では、滋賀県大津市に自生するアカメガシワ(Mallotus japoncus)の種子の細菌叢を16S rRNAのアンプリコン解析から明らかにした。アカメガシワは雌雄異株の木本植物で、明るい林縁に生育する典型的なパイオニア種である。枝先に円錐花序をつけ、一つの果実につき3つの種子をつける。本発表では、アカメガシワの種子内の細菌叢を明らかにし、その変異を、果実内、花序内、個体内、個体群内で比較した結果を紹介する。