| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-218  (Poster presentation)

イヌタデ属植物における被食防衛戦略の種間差異が生じる要因
Factors causing interspecific variations in defence strategy in genes Persicaria

*木下雄輝, 小宮山佳奈, 阿部周平, 石崎智美(新潟大学)
*Yuuki KINOSHITA, Kana KOMIYAMA, Shuuhei ABE, Tomomi ISHIZAKI(Niigata Univ.)

植物の被食防衛戦略には、抵抗性や補償がある。例えば、被食防衛戦略の多様性を説明する資源利用仮説では、富栄養の環境に生育する種は成長速度が速いため、補償を行うが、貧栄養の環境では成長速度が遅いため、被食されないように抵抗性を強めるとされる。このように、防衛戦略には生活史戦略も大きく影響すると考えられる。タデ科イヌタデ属は水湿地から路傍や林内などさまざまな環境に生育する。そこで、イヌタデ属植物を対象とすることで防衛戦略と生活史戦略、生育環境の関連について明らかにすることができると考えた。本研究では、一年生草本であるヤナギタデ(Persicaria hydropiper)とハナタデ(P. posumbu)とミゾソバ(P. thunbergii)を対象として、環境要因や防御形質、生活史形質を基に種間の防衛戦略の違いを明確化し、生活史戦略との関連を明らかにすることを目的とした。
環境要因として、開空度、土壌硝酸塩濃度、攪乱頻度を測定した。その結果、ヤナギタデはヨシ原内に生育し、暗く、貧栄養で、生育後期には攪乱が多かった。ハナタデは路傍に生育し、暗く、富栄養で生育期の前期後期とも攪乱が多かった。ミゾソバは湿地の縁の富栄養な環境に生育し、明るく攪乱が少なかった。また、防御・生活史形質として、抵抗性の強さ(ハムシの食害を免れた割合)、補償の強さ(被害後の成長・繁殖の程度)、成長率等を測定した。その結果、抵抗性の強さではミゾソバが最も低く、次いでハナタデ・ヤナギタデが同程度の強さであった。補償の強さについてはミゾソバが他2種よりも高い傾向がみられた。成長率では、ヤナギタデが最も高い傾向があった。以上のことから、貧栄養・攪乱があるといった負荷のかかる環境に生育するヤナギタデやミゾソバは抵抗性を優先する必要があること、負荷が少ない環境に生育するミゾソバでは補償を優先する必要があることが明らかとなった。


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