| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-220  (Poster presentation)

スズメノカタビラ(Poa annua L.)種子の散布時季と重量が発芽に与える影響
Effects of dispersal seasons and weight of seeds on germination of Poa annua L.

*金室早貴, 立木佑弥, 鈴木準一郎(東京都立大学)
*Saki KANAMURO, Yuuya TACHIKI, Jun-Ichirou SUZUKI(Tokyo Metropolitan Univ.)

 予測不能な頻撹乱環境下で生育する植物では、同一個体の生産する種子の休眠期間が異なり、発芽がばらつくと進化的に有利だとされる。休眠期間には種子重量が影響するので、撹乱依存種の一個体が生産した種子の重量は大きくばらつき、発芽もばらつく可能性がある。そこで、本研究では、秋と春に非常に多数の超微量な種子を生産する、典型的な撹乱依存種の冬型一年生植物スズメノカタビラ(Poa annua L.)を用い、種子の重量と発芽特性を個体レベルで解析した。
 本研究では、3地点(地点1:東京都板橋区都立城北中央公園、地点2、3:東京都八王子市南大沢東京都立大学) で継続的に種子を採集し、個体あたりの種子数を記録した。各採取日で最大96粒の種子を一粒ずつ秤量し、発芽実験を90日間行い、未発芽種子の生死をTTC染色で確認した。
 2020年の10月から9月までの間で、種子生産は11月4日から12月30日と2月20日から6月1日に見られた。秋季には、約0.10 mg~0.40 mgの軽い種子が少数生産され、発芽までの日数は約20日~60日だった。 種子の生残率や発芽率は春季に比べて低く、生残率は種子生産期間の進行につれて減少した。春季には、約0.05 mg ~0.60 mgの重い種子が多数生産され、発芽までの日数は約10日~90日だった。夏に向かって、種子重量と90日以内の発芽率は減少し、種子数が増加した。採集した種子の重量と生残率には、両季節で正の関係が見られた。頻撹乱地に生育するスズメノカタビラでは、種子の休眠期間が異なり、発芽直後の脆弱な実生の時期も子供の間でばらつき、全ての子が一斉枯死するリスクが低下しているのだろう。秋散布種子は、長い休眠期間で冬季の低温を回避し、春季後半に生産された軽量種子は、予測性の高い夏季の高温を、長い休眠期間で回避した可能性がある。休眠期間に変異をもたらす要因の解明には、野外での個体の成長動態と種子の重量や生産時季に起因する発芽の生理的な機構に生じる変化の検討が必要である。


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