| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-223  (Poster presentation)

都市化に有利な形質の検討
Consideration of advantageous characters to urbanization

*其田梨花子(東京都立大学)
*Rikako SONODA(Tokyo Metropolitan University)

近年、人間の開発によって形成された都市域は、生育地の消失、縮小、分断を通して様々な植物に負の影響を与えている。都市化によって多くの植物が生育地を減少させた一方で、都市での分布拡大に成功した植物も存在する。都市で成功している種には、生来的な形質が持つ環境要求性が都市域に合致した種や、都市環境に対して適応進化した種が存在するが、これは排他的ではなく、いずれのケースも種が持つ形質が都市環境において有利に働く状態になっている点で共通する。本研究では、都市に特有に存在する選択圧として、目立つと除去されやすくなるという人為的な圧と、人工物によって光を得にくくなるという物理的な圧を設定し、これに対して有利になる形質を検討した。基礎生態やその他の形質が統一されたカタバミ属3種、カタバミ(Oxalis corniculata)、オッタチカタバミ(Oxalis dillenii)、アカカタバミ(Oxalis corniculata f. rubrifolia)を対象とし、神奈川県内の駅周辺を対象地に設定した。カタバミとアカカタバミは地面に這うように生えるが、カタバミの葉は緑色で、アカカタバミは赤色という特徴がある。オッタチカタバミの葉はカタバミ同様に緑色であるが、茎が太く直立するという特徴がある。駅周辺でタイムリミットセンサスを行い、対象種の生育を確認した地点の緯度経度及び生育地点の環境を記録した。分析手法としては、フィッシャーの正確確率検定によって、4駅間でのカタバミ属3種の生残率比較およびカタバミ属3種の生残した個体の生育場所比較を行った。本調査の結果からは、当初の予想である、アカカタバミがコンクリート上に多くなることは示されなかったが、全体的に光を得にくい街路樹の真下では、オッタチカタバミが多くなる可能性が示された。よって都市域の光を得にくい場所では、光を得やすい形質が有利に働く可能性が考えられる。


日本生態学会