| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-231  (Poster presentation)

暖温帯二次林林床における樹木19種の樹冠・シュート形態と受光戦略の多様性
Light interception strategies in relation to crown and shoot structure of 19 tree species in a warm temperate forest understory

*久保貴寛, 長田典之(名城大学)
*Takahiro KUBO, Noriyuki OSADA(Meijo Univ.)

 森林では、成木樹高や耐陰性といった生活史戦略の異なる多種の樹木が、森林内の光勾配を分割することで共存していると考えられている。この戦略の違いには樹冠形態が関連していることが知られている。樹木個体の形態は葉、シュート、一次シュート系(幹から分枝した一次枝とそれにつく枝葉のまとまり)、樹冠といった階層構造でできており、葉や一次シュート系形質も樹冠形態と関連することが予想される。また、シュートや個体においてバイオマス量と葉の受光量の比(受光効率)は光資源獲得の戦略を示す重要な指標であり、生活史戦略と関連することが予想される。本研究では、暖温帯二次林林床で共存する樹種を対象として生活史戦略や樹冠、一次シュート系形質を調べ、樹木の生活史戦略と形質、受光戦略の関連について明らかにすることを目的とした。
 豊田市自然観察の森の林床で優占する19樹種を対象とし、成木樹高と耐陰性を測定した。低木個体を用いて、樹冠形態、一次シュート系の形態、一次枝の力学的・水理学的特性、受光効率を測定した。
 この結果、耐陰性が弱い種ほど樹冠深度が浅く、一次枝数が少ない傾向がみられた。一次枝の道管直径が大きい種ほど通水コンダクタンスは高く、一次枝乾燥密度は低く、一次シュート系の成長速度は速い傾向がみられた。一次枝乾燥密度が高い種ほど一次枝の破壊応力が高い傾向がみられたが、一次シュート系の総葉面積や一次枝のヤング率はこれらの形質と関連していなかった。これらの耐陰性と樹冠形態、一次枝形質の違いは個葉面積と関連していた。また、個体の受光効率は耐陰性と関連していた。
 耐陰性は樹冠形態の違いと関連する重要な指標であった。個葉面積は葉の三次元的配置にもとづいて一次枝形質を制約し、一次枝の力学性により樹冠形態が決まっていた。受光効率は耐陰性の違いと関連しており、樹高成長と樹冠拡大の戦略の違いと対応していることが示唆された。


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