| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-235  (Poster presentation)

マルバシャリンバイにおける塩ストレス耐性の評価
The evaluation of salt stress tolerance in Rhaphiolepis umbellate Makino var. integerrima

*筒井悠理, 前田耕治, 半場祐子(京都工芸繊維大学)
*Yuri TSUTSUI, Kohji MAEDA, Yuko T HANBA(Kyoto Institute of Technology)

街路樹は街並みの装飾のほかに、光合成によるCO2吸収や蒸散による冷却など様々な役割を果たすことが求められており、過酷な環境下にあっても生存し、それらの役割を維持する必要がある。しかしながら、近年、地球温暖化などに起因する台風の大型化により、巻き上げられた海水の塩分によって街路樹が枯れてしまう被害が内陸部でも報告されるようになってきた。そのため今後は、街路樹の塩ストレス耐性の有無が街路樹植栽計画における評価基準の一つとしてより重要視される可能性がある。本研究では、過去の主要な街路樹4種を用いた研究により塩ストレス耐性をもつことが示唆された常緑低木マルバシャリンバイ(Rhaphiolepis umbellate Makino var. integerrima)を用いて、どの程度の塩濃度まで耐性をもつのか、また、塩処理によって生理学的機能が低下した場合、塩処理を停止した後の灌水処理によってそれらの機能は回復するのかを調べ、マルバシャリンバイの塩ストレス耐性機構の解明に繋げることを目的とした。実験ではそれぞれ週3回、温室で栽培した植物に、50/100/150 mM NaCl水溶液約150 mlを約3週間与えた(塩処理段階)後に塩処理を停止し、水道水約150 mlを約4週間与えた(回復処理段階、2020年度のみ)。また、2021年度には125 mM 塩処理区を追加し、より微細な塩ストレス応答の比較を行った。注目すべき結果の一つとして、マルバシャリンバイは塩耐性実験において一般に高濃度とされる150 mM NaCl塩処理を行っても光合成機能を維持した。このことから、塩ストレス条件下における街路樹としての植栽候補となり得ることが示唆された。また、塩処理開始約1週間後に葉内Na濃度が低下していたことから、塩ストレス初期に葉内からNaを積極的に排出する機構が存在する可能性がある。


日本生態学会