| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-237 (Poster presentation)
地球上の様々な環境の下で植物が成長し生きていく上で、光合成により空気中のCO2をいかに効率良く取り込むかは重要な課題である。水生植物は冠水の程度が大幅に変化し、空気と触れる面積が変動することで取り込むことができるCO2の変動が大きくなる。このことから、冠水ストレスによって光合成機能も大きく変化すると予想される。また、昨今では台風や大雨などによる作物の湛水被害が見受けられる。したがって、本研究では冠水ストレスが水生植物の光合成機能や成長にどう影響するのかを探ることを目的とし、植物材料として作物であるイネ(コシヒカリ、ミルキークイーン、こがねもちの3品種)を用いた。プラスチックポットに植物の苗を植え込み、冠水を施さない区と植物体全体が冠水する水位に固定する冠水処理区で10日間栽培を行い、光合成機能を比較した。
赤外線ガス分析計LI-7000を用いて葉の光合成機能を表すパラメータである飽和光合成速度、気孔コンダクタンス、葉肉コンダクタンスを測定した。葉肉コンダクタンスは炭素安定同位体法を用いて測定を行った。また、LMA(葉面積あたりの葉重)を算出し、成長途中及び成熟した植物体における冠水前後での差異を調査した。
冠水処理により両種において光合成機能がすべて大幅に減少した。また、ストレス応答に品種による違いが見られた。LMAは、成熟個体では冠水による変化は見られなかったが、成長途中の個体においては減少した。
冠水ストレスにより光合成機能が大幅に減少した理由としては、気孔の開閉調節の異常によるCO2の取り込み阻害、葉内形態変化による葉肉細胞内のCO2拡散制限の増加が考えられる。以上のことから、冠水は水生植物に対して強いストレスとなること、また品種によって光合成機能の阻害の程度は異なることが明らかになった。