| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-238  (Poster presentation)

雪解け傾度に沿った高山植物8種の葉特性季節変化
Seasonal changes in leaf traits of 8 alpine plant species along the snowmelt gradient

*峯村友都, 和田直也(富山大学)
*Yuto MINEMURA, Naoya WADA(Univ.Toyama)

 長期間にわたって生じる雪解けの空間変異は植物にとっての生育期間の多様性を生み出す。落葉性あるいは夏緑性の植物では生育期間の短縮に伴い正の炭素バランスを維持するため、個葉を形成するコストを下げ、光合成効率を高めることに貢献する窒素含有量の高い葉を形成する。一方、常緑性植物では個葉を形成するコストを高め、寿命を長くすることで炭素獲得期間を延ばすといった応答が期待される(Kudo et al., 2001)。このような植物が示す雪解け傾度に沿った応答は食物網を通じて植食者の餌資源選択にも影響を与える可能性がある。本研究では、雪解け傾度に沿った植物の葉特性から見た応答を明らかにし、同時に植食者に与える影響について検討した。調査は富山県立山山地室堂山の北向き斜面にて2020年に実施した。対象種は、雪解け時期の異なる地点に生育する草本4種と木本4種(落葉種1種・常緑種3種)である。個葉の全炭素量(C濃度)、全窒素量(N濃度)、また、木本種のみタンニン量(T濃度)も測定し、採取地点の雪解け日を推定することで有効積算温度を求め、葉特性との関係を考察した。C濃度は有効積算温度の増加と共に概ね増加、また種間差が増大し、常緑木本種で高く草本種で低かった。一方、N濃度は有効積算温度の増加と共に減少、また種間差が減少し、草本種で高く木本種で低かった。初夏は盛夏や晩夏に比べ、C濃度が低くN濃度の高い(CN比の低い)葉が多く、雪解け時期の違いによる空間的な差異が大きかった。被食防御機能を有するタンニンは、炭素を主成分とする二次謝物質であり、季節の進行に伴い濃度が増加するものと予想されたが、その傾向は落葉種のみで確認された。常緑種2種ではC濃度の上昇に伴いT濃度が減少する傾向にあった。以上の結果から雪解け傾度が作り出す、餌資源からみた葉特性の時空間変異について考察を行った。


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