| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-240 (Poster presentation)
樹木の個体が幹を複数持つ形態を株立ちといい、株立ちには攪乱による幹の損失リスクを減らす利点があるとされている。実際に、積雪量が多い日本海側の森林では、雪の重みに適応するために、株立ちし、幹を傾けている低木が多くみられる。よって、株立ちのような樹形やその可塑性は、樹木群集組成に影響する重要な形質である可能性が高い。しかし、環境に応じて低木の樹形がどのように異なるかを調べた研究は殆どなく、環境が森林の低木の樹形とどのような関係があるかはわかっていない。本研究では、積雪量が異なる複数の冷温帯林で低木の樹形を調査し、低木の樹形がどれくらい異なるのか、またその違いは何によって説明されうるか解明することを目的とした。長野県内の最大積雪深が異なる(約4 m、1 m、1m)三つの冷温帯林を調査対象地とした。各調査地における低木層を構成する樹種について、各樹種6~8個体ランダムに選び、幹数と地面に対する幹の傾きを調査した。その結果、最大積雪深が約4 mの森林では、他の森林と比較して、低木で平均して幹数が2倍多く、傾きも1.5倍傾いていることが分かった。さらに、一般化線形混合モデルによるモデル選択を行った結果から、幹数は調査地と種間の差で、幹の傾きは調査地間の差によって説明できることがわかった。本研究によって、積雪に対して低木は樹形を変化させることで適応しており、その可塑性は幹数と幹の傾きで異なるということが示された。