| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-241  (Poster presentation)

18樹種の展葉過程におけるタンニン・フェノール量:防御物質の生成と濃度の変動
Fluctuations tannin and phenol concentrations during leaf expansion 18 tree species

*萩原陽子(日本女子大学), 長田典之(名城大学), 上田実希(日本女子大学)
*Yoko HAGIWARA(Japan Women's Univ.), Noriyuki OSADA(Meijo Univ.), Miki UEDA(Japan Women's Univ.)

森林を形成する植物が環境に適応した結果、森林内の樹種の生活史は様々である。例えば、葉が芽吹く時期は種ごとに異なり、常緑樹と落葉樹は季節を通して葉の保持方法が大きく異なる。植物は成長する際、外的要因から守るために防御物質を生産する。防御物質の研究は、成熟した葉やリターとなった葉について広く研究がなされてきたが、葉の展開に沿って防御物質がどのように充填されているのかについての関連性はまだ明らかになっていない。しかし、葉の展開の初期は葉がもっとも未熟で食害を受けやすい。以上より、展葉段階における防御物質濃度の変動を常緑樹と落葉樹にわたって明らかにすることは重要である。本研究ではタンニンとフェノール濃度の変動を、常緑樹と落葉樹間で違いを明らかにすることを目的とした。
本研究では、常緑広葉樹と落葉広葉樹から各9種を材料とした。6か月間かけて葉の採取が行われた。
フェノール濃度は、常緑樹の多くは展葉開始時の濃度が高く、成長するにつれ低下する傾向を示した。展葉開始時、被食防御のために生産し、成長に伴い濃度が希釈されたためである。一方落葉樹では、常緑樹より濃度が低く一定に保たれていた。タンニン濃度は、常緑樹の多くは低濃度を示した一方で、落葉樹は常緑樹より高い濃度での変動を示す種が多かった。
展葉開始時に顕著だった常緑と落葉間のフェノールの濃度差は、展葉開始時に前年に生えた葉が存在するかによるものと推測する。常緑は展葉開始時に、すでに存在する他の葉のはたらきにより防御物質の生産も行うことが出来、結果として展葉開始時から防御物質濃度が高い結果を示したと考える。一方、落葉樹が常緑樹よりタンニンが高濃度域を示したのは、前年の葉を持たないため、苦味で防御するタンニンを多く生産する戦略を取ったと考える。以上より、常緑樹と落葉樹間で防御物質の濃度変動パターンが大きく分けられることが示された。


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