| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-244  (Poster presentation)

アクアポリンtip2;2の光合成への影響
Effect of aquaporin tip2;2 on photosynthesis

*冨田麟太郎(京都工芸繊維大学)
*Rintaro TOMITA(KIT)

アクアポリンは水透過性を持つ膜局在型タンパク質で、膜内外の水輸送において最も効率的に働く水チャネルである。1990年代に発見されて以降、構造、基質特異性、活性特性、細胞内局在性や植物の生理的機能における役割など多くの情報が明らかにされてきた。Arabidopsis thaliana(シロイヌナズナ)はアクアポリンを35種持ち、そのうち主なものは大きく4つPIP、TIP、NIP、SIPに分類される。Tipは液胞膜型のアクアポリンと呼ばれ、孔辺細胞でも発現していることが報告されている。気孔の開閉には、孔辺細胞と周辺細胞との間で水のやり取りが行われており、Tipはそこに関わっていると考えられる。本実験では、まだ、あまり行われていない湿潤によるストレスをシロイヌナズナに与えることで、気孔の開閉を介したTipの光合成への関与について調べた。
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の野生型columbia-0と、アクアポリンTip2;2遺伝子欠損体の2系統を発芽させた後、グロースチャンバー内で約2ヶ月間育成した。その後、15日の湿潤ストレスを与えた。ストレス0日後、5日後、10日後、15日後の植物体の光合成機能を測定し、湿潤ストレスへの耐性を評価した。
 その結果、columbia-0系統の野生型では、各種光合成機能の低下の傾向が見られた。しかし、光合成パラメーターの有意な低下はTip2;2遺伝子欠損体では見られなかった。
このことから、湿潤ストレス処時、アクアポリンTip2;2は気孔を介して光合成に関与している可能性がある。


日本生態学会