| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-249 (Poster presentation)
中央アジアのアラル海周辺の土壌塩類集積地において塩生植物を利用した環境修復を実現させるため、塩生植物の耐乾性・耐塩性の簡易評価手法の確立が求められている。葉の炭素安定同位体比はC3植物において内的水利用効率(気孔コンダクタンスに対する光合成速度の比)を反映し、葉の酸素安定同位体比は光合成タイプに拠らず蒸散量や吸水源の酸素安定同位体比を反映することが知られている。したがって、塩生植物の耐乾性・耐塩性の評価指標としての利用が期待できるが、塩生植物の酸素安定同位体比に関する情報は不足している。そこで本研究では、ウズベキスタンのアラル海周辺3地点において2010年に採取された塩生植物の葉の乾燥サンプル71種、312個体分の炭素安定同位体比とそのうち40種、200個体分の酸素安定同位体比を測定した。さらに、対象地域の塩生植物の葉の酸素安定同位体比の決定要因を明らかにするため、重回帰分析を用いて生理生態的因子(C3/C4の光合成タイプ、一年生草本/多年生草本/木本の植物タイプ、根の深さ)と気候的因子(年降水量、年平均気温)の影響を調べた。その結果、対象地域の塩生植物の葉の酸素安定同位体比は光合成タイプ、植物タイプ、年降水量、年平均気温に有意に影響を受けていたのに対し、根の深さ、すなわち吸水源には影響を受けていないことが分かった。さらに、生理生態的因子として炭素安定同位体比を加えると、C3植物では炭素安定同位体比、植物タイプ、年平均気温に有意に正、年降水量に有意に負の影響を受けていた。内的水利用効率が高く、高温少雨条件下の種ほど酸素安定同位体比が高かったことは、C3植物において酸素安定同位体比が高い種ほど気孔コンダクタンスが小さい可能性を示唆する。一方、C4植物では炭素安定同位体比と植物タイプにのみ有意な影響を受けており、後者の影響がより大きいことが分かった。