| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-251  (Poster presentation)

森林へのバイオチャー散布がコナラ細根動態に及ぼす影響
Effects of biochar application to fine root dynamics of Quercus serrata in an oak forest

*野村みおと(早稲田大学), 竹内宏太(東京大学), 今吉健斗(早稲田大学), 吉竹晋平(早稲田大学)
*Mioto NOMURA(Waseda Univ.), Kota TAKEUCHI(The Univ. of Tokyo), Kento IMAYOSHI(Waseda Univ.), Shinpei YOSHITAKE(Waseda Univ.)

地球温暖化抑制に向けた炭素隔離策として、バイオチャーの土壌施用が挙げられている。森林生態系へのバイオチャー散布は、樹木の地上部成長に正の影響を与える。一方、樹木地下部に関しては研究例が少なく、正・負両方の報告がされており未知な部分が多い。樹木地下部の中でも細根は森林生態系の炭素や栄養素の動態の中心的な役割を担っていることから、本研究では特に細根に着目し、森林生態系へのバイオチャー散布が樹木細根動態に及ぼす影響を解明することを目的として研究を行った。
本研究は埼玉県本庄市のコナラ林にて行った。0t、5t、10t / haとなるよう木質バイオチャーを散布し、約1年が経過した調査区においてスキャナ法による土壌断面の撮影を経時的に行い、画像を解析することで細根生産率・平均直径・分岐数などを算出した。また、同様のバイオチャー散布から約5年経過した別の調査区において、細根バイオマスの測定とルートメッシュ法による細根生産量推定を行った。
スキャナ法による解析の結果、細根の生産は春~夏に活発で秋~冬にかけて枯死が増加する傾向が見られた。バイオチャー散布直後の1年目は散布量が多いほど細根の生産率が上昇する傾向が見られたが、2年目は5t、10t、0t区の順に高くなった。細根の平均直径に大きな違いは見られなかった。細根の分岐数は散布から1年目・2年目ともに散布量が多いほど減少する傾向が見られた。本研究と同じバイオチャー散布土壌ではバイオチャー散布によってpHやリンが増加し、無機態窒素(NO3、NH4)が減少しており、バイオチャーが持つ土壌改良効果により土壌中の栄養塩状態が変化したことが細根の成長や枯死、さらには分岐数といった形態の変化に影響した可能性がある。一方、散布後5年が経過した調査区では細根のバイオマスおよび生産量に大きな違いは見られなかったことから、バイオチャーが細根動態に及ぼす影響は比較的短期的なものである可能性がある。


日本生態学会