| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-256 (Poster presentation)
日陰の形成や蒸発散に伴う夏季の温度低減効果は、都市緑地がもたらす重要な生態系サービスの一つであり、ヒートアイランド現象の緩和を中心に、その利活用に対する期待が高まっている。温度低減に大きな影響を及ぼす蒸発散に関して、樹種や個体サイズによる蒸散特性の違いが報告されていることから、緑地を構成する樹種によって温度低減効果には違いがあることが予想される。しかし、同種内で複数個体を対象に、種内のばらつきを考慮した上で、樹種ごとの温度低減効果を検討した研究はほとんど見られない。そこで本研究は、樹種ごとの温度低減効果を把握するため、ドローンによって撮影した可視画像および熱赤外線画像を利用したリモートセンシングと現地調査を組み合わせ、個体を識別した上で、複数個体の樹冠表面温度を広域的・面的に観測するアプローチにより、都内の都市緑地で検討を行った。その結果、樹種によって樹冠表面温度に違いが検出され、温度低減効果に違いがある可能性が示された。一方で、樹冠傾斜方位と樹冠表面温度の関係については、傾斜方位の違いによる温度差は見られなかった。さらに、樹種の由来と樹冠表面温度の関係の検討を試みたところ、可能な限り要因の統制を行ったこと、対象とした緑地の樹木のほとんどが在来種であったことにより、議論を深めることができなかった。今後は、サンプル数の増加や異なる環境下での検討のため、多地域において本研究と同様のアプローチによる検討を進めていくことが望まれる。