| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-258  (Poster presentation)

海浜植物の飛砂耐性にクチクラが関与している可能性:内陸植物との比較による検討
Possible contribution of cuticle to the wind-blown sand resistance of coastal plants: a comparative study with inland plants

*沼田萌(鳥取大学)
*Megumi NUMATA(Tottori Univ.)

飛砂は海浜環境における最も大きなストレスの一つで、舞い上がった砂が植物体に衝突し生育が阻害される。海浜植物は内陸植物に比べ厚いクチクラを持ち、飛砂傷害を受けにくいため海浜環境でも生存できると考えられているが、実際に両者のクチクラ厚を計測・比較した研究はない。そこで鳥取砂丘周辺に生育する19種の植物のクチクラ厚を測定し、その種間差および生育環境による違いを調べた。またクチクラ層の最外層を構成するクチクラワックスの蓄積量と化学組成を分析し、飛砂耐性との関係を検討した。
クチクラ厚は植物種によって大きく異なり、海浜植物の方が内陸植物に比べて有意に厚かった。しかし砂丘に広範囲に分布する6種の植物において、汀線から内陸まで採取地点間でクチクラ厚に違いはなく、飛砂量とクチクラ厚の有意な関係も見られなかった。葉面積あたりのクチクラワックス蓄積量は海浜植物に比べて内陸植物のほうが多かったが、ワックスの蓄積量とクチクラ厚に有意な相関は見られなかった。ワックスの化学組成は植物種によって著しく異なったが、海浜植物と内陸植物で明確な違いはなかった。以上から、本研究は海浜植物が内陸植物に比べ厚いクチクラを持つことを明らかにしたが、クチクラ厚が飛砂傷害耐性に寄与していることを実証することはできなかった。クチクラワックスの化学組成に大きな種間差があることを示したが、飛砂傷害耐性との関係は不明であった。飛砂耐性におけるクチクラの寄与を検証するには、人工的な飛砂曝露実験やクチクラの表面傷害の観察・定量が必要だと思われる。


日本生態学会