| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-259  (Poster presentation)

花蜜微生物群集の地理的変異 【B】
Geographic structures of microbial communities in floral nectar 【B】

*廣野由奈, 下野綾子(東邦大学・理・生物)
*Yuna HIRONO, Ayako SHIMONO(Toho Univ. Biology)

 花蜜には酵母や細菌などの微生物が存在し、花蜜微生物の主なベクターは送粉者とされている。送粉者の組成は、標高傾度や、山岳や島嶼といった地理的障壁によって変化することが知られている。従って、花蜜微生物の群集構造も標高傾度や地理的障壁によって異なる可能性が考えられる。そこで本研究では以下の仮説を検証した。1)標高傾度や山岳によって花蜜微生物群集が異なる。2)島嶼と本土で花蜜微生物群集が異なる。
 長野県の山岳(根子岳・浅間連峰)でレンゲツツジの花蜜を、伊豆諸島(大島・神津島・三宅島・八丈島)と本土(伊豆半島・房総半島)でヤブツバキの花蜜を採集した。真菌群集を培養法とメタゲノム法で、細菌群集をメタゲノム法によって調査した。メタゲノム法で得られた配列を97%相同性で分類し、操作的分類単位(OTU)とした。OTU数・Shannon-Wienerの多様度指数(H’)と、標高との関係を一般化線形モデルで評価した。また、OTU数・H’の地点間の違いをスティール・ドゥワス法で多重比較した。地点間のBray-Curtisの非類似度指数を算出し、微生物群集が地域によって異なるかPerMANOVAにより検定し、距離との関係をMantel検定で評価した。
  1)ツツジ花蜜微生物群集には標高傾度や山岳による地理的構造は検出できなかった。一方、メタゲノム法の真菌群集で標高とOTU数との間に正の関係が見られ、H’とOTU数が山岳間で有意に異なった。2)ヤブツバキの微生物群集は島嶼ごとに異なり、島嶼と本土でも有意に異なった。また、地点間の距離と非類似度に正の関係が見られた。OTU数やH’に地点による有意差は見られなかった。
  伊豆諸島のヤブツバキの主なポリネーターはシチトウメジロで、一部は本土から渡ってくるメジロとされているが、島嶼は花蜜微生物群集においても地理的障壁となる可能性が示唆された。


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