| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-260 (Poster presentation)
多くの陸上植物は、土壌から養水分を効率的に獲得するために根部で菌根菌と共生関係を持っている。また、植物根内部にはそういった菌根菌以外にも内生菌と呼ばれる真菌が生息している。この内生菌の中には植物の生育を促進させるものも知られており、植物にとって重要な役割を持つ可能性が示唆されている。菌根を形成する植物の中でも、日本などの温帯林においてはマツ科、ブナ科といった外生菌根性の樹種が優占している。こういった樹種と共生する外生菌根菌は宿主植物の細根を覆うように菌鞘を形成し、病原菌といった他の菌類の侵入を防ぐことが知られているが、こういった植物の根部においても菌根菌以外の内生菌の存在が知られている。内生菌と外生菌根菌は共に細根という限られた空間を利用するため何らかの相互作用をしている可能性があり、宿主植物に対しても影響を与えていると考えられる。しかし、野外における内生菌の生態は大部分が未解明である。そこで本研究では、外生菌根性樹木であるアカマツとアラカシを対象に根端ごとの真菌群集を、標準DNAを用いた定量的なDNAメタバーコーディングにより調べ、根端における真菌群集の組成とその中での菌間の関係性について解析を行った。
この結果、7割以上の根端において外生菌根菌と内生菌がどちらも検出され、外生菌根菌と内生菌が根端において共存していることが示唆された。樹種間で根端の真菌群集を比較すると、真菌群集全体、外生菌根菌群集、内生菌群集の組成において違いが見られた。菌間の関係性についての解析では、特定の内生菌の存在によって外生菌根菌の総DNA量の増加が見られた一方で、別の内生菌の存在によっては外生菌根菌の総DNA量が減少したという結果が得られた。これらのことから、内生菌が外生菌根性植物の根部における主要な真菌の機能群の1つであり、植物や外生菌根菌と系統ごとに異なる相互作用をしていることが示唆された。