| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-273 (Poster presentation)
都市化は経済発展をもたらす一方で生態系や健康に負の影響も与えてきた。近年の研究では、都市化に伴う景観の変化が、人と自然のつながりと自然の価値認知を低下させる可能性が示唆されている。都市化は、人と自然に直接的にも間接的にも影響しうるが、その複合的な影響は十分に明らかにされていない。そこで、本研究では以下3つのリサーチクエスチョンを検討した。(ⅰ)都市化は人と自然のつながりにどのような影響を与えるか?(ⅱ)人と自然のつながりは自然の価値認知にどのような影響を与えるか?(ⅲ)都市化は、人と自然のつながりと自然の価値認知の関係性にどのような影響を与えるか?
本研究では「関係価値」と「有用価値」を合わせて「自然の価値」と定義した。都市化レベルの異なる流山市内の3地域(農村・都市化進行・都市)でアンケート調査を実施し、ランダムに抽出された688人の住民からの回答を得た。データは因子分析、共分散構造分析、多母集団同時分析という3つの統計分析にかけられた。
人と自然のつながりについては、「物質」「経験」「認知」「感情」「哲学」「人間中心」の6つの因子が抽出された。本研究の結果から、都市化の進展は「物質」「経験」「感情」「哲学」を有意に低下させることが示された。この結果から、これら4つのつながりは周辺環境の影響を受けやすいことが示唆された。また、有用価値と関係価値の認知は人と自然のつながりの異なる側面に影響を受けることが示唆された。つまり、関係価値認知の向上には「経験」「哲学」の強化と「人間中心」の抑制が、有用価値認知の向上には「認知」の強化が重要であることが示唆された。最後に、都市化の進展にかかわらず、ほとんどの人と自然のつながりと自然の価値認知は正の相関を持つことが示された。このことは、都市化が進む地域でも、人と自然のつながりを強化させることができれば、自然の価値認知が向上することを示唆する。