| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-274  (Poster presentation)

多摩丘陵の里山型公園の整備における法面草地の減少 【B】
Reduction of slope grassland in the development of Satoyama-type park in Tama Hills 【B】

*紀正, 倉本宣(明治大学)
*Zheng JI, Noboru KURAMOTO(Meiji Univ.)

  日本では草原がかつては現在よりもはるかに広い面積を占めていた。多摩丘陵にも牧があり草原が優占していた都立公園が知られている。多摩丘陵の伝統的な土地利用が行われていた時代の谷戸では、谷底部に水田が位置し、斜面に雑木林や茅場が位置しており、水田の日照を確保するために穴刈りが行われて、裾刈り草地が帯状に広がっていた。しかし、多摩丘陵では開発が進み、開発を免れた川崎市麻生区黒川(明治大学黒川農場の所在地)などにおいても、里山の利用が減少して、雑木林の主木が大径木化して、裾刈り草地の光環境は悪化した。同時に農家の営農意欲の低下に伴い、穴刈りは行われなくなり、農家によっては除草剤を使用するようになった。
  里山の保全をうたっている川崎市生田緑地では、本来なら目的に照らして、裾刈り草地を保全すべきであると考えられる。しかし、現況調査によれば、裾刈り草地はほとんど存在しなかった。その原因は、まず、整備の際に、林冠の下まで、園路広場として舗装したり、腰積み擁壁を築造したり、低木を密植した生垣をつくったりすることによって、裾刈り草地の立地を失わせた。そのうえ、管理の際に、雑木林の皆伐更新を行わないで大径木化に任せ、草地の草刈の頻度が低下し、刈草を持ち去らないので、裾刈り草地の質も低下した。
  生田緑地で現在唯一ワレモコウやツリガネニンジンが生育している裾刈り草地は車道のカーブの内側で、視距を確保するためにくりかえし草刈が実施されている場所である。この場所のような条件を保てば、生田緑地においても裾刈り草地の再生を可能にことができるであろう。


日本生態学会