| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-277  (Poster presentation)

野川における文化的サービスの現状に関する検討
Current State of Cultural Services of the Nogawa River

*ウシメイ, 倉本宣(明治大学)
*Ximei WU, Noboru KURAMOTO(Meiji University)

 都市河川は地域の風土や文化を形成する重要な要素でもあり、市民の暮らしとの密接な関わりの中で、「環境教育的機能」を含み、「レクリエーション機能」、及び「審美的機能」のような文化的サービスを供給する場となっている。本研究では、東京都を流れる野川を選定し、サインをベースとして、提供している文化的サービスの現状を明らかにすることを目的として、今後河川および地域の文化的サービスの向上のあり方について検討した。
 調査方法については、2022年1月に、野川周辺のサインを記録して、それぞれの設置場所および内容を記録した。全てのサインの中で、注意サイン、案内サイン、記名サインを除いて、地域の歴史や文化などを記した解説サインの記載内容を分析した。結果として、野川におけるサインは、注意サインが80%を超えていた。解説サインの内容は、主に歴史的な自然環境、野鳥、魚であった。また、生態に関わるサインの密度には、場所ごとの偏りがあった。中流域の神明橋周辺、上流の野川公園、お鷹の道に多く設置されていた。さらに、神明橋〜新二子橋の間(世田谷地区)に、シリーズのサインが設置されているものの、古すぎて文字が読めないものや画像が見えなくなったものが多かった。
 本研究により、野川のサインの調査結果、自然・環境に関する解説サインが内容別、場所別に偏りがあり、しかも、老朽化したサインが多く存在することがわかった。サインは市民の暮らしに身近なもので、環境教育を含む、文化的サービスの向上にも重要な役割となっている。文化的サービスの向上において、サインの整備には地元の自然・文化の内容、風景・景観を配慮したデザインが不可欠である。さらに、今後、適切な地域文化を記載するサインの設置とともに、既存サインの定期的に点検し、情報の内容を確認・更新することが望ましい。


日本生態学会