| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-281  (Poster presentation)

スズタケ実生の経年形態変化と異なる林分樹種・林床環境における地上・地下の成長比較
Four-years monitoring of Sasa borealis seedlings and comparing of growth including under-ground among forest types and forest-floor conditions

*鈴木華実, 梶村恒(名古屋大学)
*Hanami SUZUKI, Hisashi KAJIMURA(Nagoya Univ.)

 タケ・ササ類は、長期間の栄養繁殖の後、有性繁殖 (一斉開花・結実・枯死) して更新する。その長い周期性により、更新過程を詳細に調査した事例は一部の種に限られている。2017年、愛知県北東部において、120年ぶりとされるスズタケの有性繁殖が確認された。以後、演者らは同地域に調査区を設定し、スズタケ実生の発生と成長を追跡しており、2019年に種子発芽のピークを迎えたことを確認している。本発表では、実生の成長に関して、その形態変化や、動物による食害の影響、さらに異なる林分の状況 (樹種、林床環境) の影響について、2018年~2021年で得られた知見を示す。
 まず、発芽時に個体識別を行い、稈の高さや数、葉の数を定期的に記録した。出稈や展葉の時期はいずれも5月から8月の間であり、栄養繁殖の場合に比べて2ヶ月程度延長する傾向にあった。また、発芽時期別の比較から、発芽ピークの2019年実生は、2018年と2020年の実生よりも比較的成長が速かった。次に、主に野ネズミによる稈の切断、主にバッタ目とチョウ目の昆虫による葉の摂食の有無で、同じ成長パラメータを比較した。稈の切断は、1年以内の一時的な稈伸長の遅延や葉数の減少をもたらしていた。一方で葉の摂食は、1年以上経過後の稈伸長を阻害したが、1年以内の一時的な葉数の増加、すなわち補償成長を誘発することが示唆された。続いて、落葉広葉樹林、針広混交林、カラマツ林、スギ林で、スズタケ実生の形態を比較した。一個体あたりの稈や葉、芽の数、乾燥重量に有意差はなかったが、稈長や葉身の大きさに関しては、針広混交林で大きく、カラマツ林で小さい傾向があった。一般化線形モデルの解析結果から、広葉樹の存在 (強い正の相関)、積算日射量 (5月と11月は強い負の相関、8月は弱い正の相関)、実生密度 (弱い負の相関) が稈長の説明要因として選択され、食害よりも大きく影響していることが示唆された。


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